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6.内容等

特別講演では、演者の積年の研究成果に基づき、立山信仰の研究史ついて、研究者だけではなく一般の参加者にも理解しやすく、概説的に紹介した。基調講演ではこれまでの立山信仰の研究動向を第1期、第2期、第3期と区分した。そして、まず地元の研究者による研究活動とその成果を報告し、次に実資料に基づき絵解きの台本とあわせて曼茶羅を読み解くといった、国文学の分野による研究活動とその成果を報告した。さらに、近年、立山博物館を中心とした曼茶羅の展示が刺激になって、新しい曼茶羅が発見されたという経緯を報告した。個別報告では立山地獄説話について分析し、仏教説話集「本朝法華験記」の場合は地獄が強調され、また観音菩薩の霊験が強調されたが、仏教説話集「今昔物語集」の場合は地蔵があらわれる。そして、どちらも代受苦(人々の苦しみをかわりにうける)が非常に強く表へ出てくるということを報告された。菊池氏は再生儀礼と布教灌頂会について、それは従来どちらかといえば、女性が死んだ後、極楽浄土へ行けるといった形として一般的には受けとめられているが、実はそうではなく、これから女性が布教灌頂会に参加すれば、お産も軽くなり、よりよい生を受けることができるという意味で、ただ単に死後の往生ではなく、現に生きる女性への利益が擬死再生によって読み取れることを報告した。さらに立山衆徒とその勧進活動について、岩峅寺と岩峅寺を対比させ明確にその特徴を紹介した。岩峅寺衆徒は、立山曼茶羅を持って実際に村々を回って歩いて勧進活動を行った。それに対し岩峅寺衆徒は、後に、幕藩体制の中で開帳という形で藩の保護のもとに動くようになった。ところが、民衆を引きつける上においては、開帳より生で実際に歩いて行って布教するほうが効果があるので、岩峅寺的な勧進活動のほうが人々を引きつけて、次第に岩峅寺衆徒がそれと類似の勧進活動を行ってきたことを報告した。

 

 

 

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